適確な湿度とは

 これまでラン栽培における「乾燥」の定義がなかった。
 どんな本を見ても、最も重要な潅水のグッド タイミングが書かれていない。
 ランがどの状態の時・・・水を欲しがっているのか。
 名人、上手と言われている人は、ランの気持ちが解かって、
 ランが水を欲しいというときに潅水している。
 しかし、ほとんど人には解からない。
 ベテラン、初心者の問題ではない。
 何十年栽培しても・・・・自分本位で、ランの気持ちなどお構いなしで、
 自分の解釈で・・・適当に与えている人も居る。
 ランが水欲しいのに・・・それより根腐れの方が怖い。
 
 「乾燥」。
 この表現があるから、ラン栽培がややこしく、難しくなる。
 一般の植物なら、葉が萎びたときが乾燥である。
 このとき潅水すれば、ほとんど間違いない。
 ところが、ランは葉が萎びない。
 だから・・・目に見えないから・・・解からない。
 指で用土を調べる。
 ところが、指先の感覚が敏感な人もいれば、鈍感な人もいる。
 「オシボリの湿度」と本講座では何回も記しているが、
 「オシボリの湿度」がわからない人もいる。
 「枯れ落ち葉内の湿度」と表現してみる。
 ところが・・・山、庭、公園で枯れ落ち葉をかきわけて地面の湿度を調べた人いない。
 しかし、水ゴケ植えの場合は・・・・・
 水に浸して固く絞った水ゴケで植える。
 この湿度こそ・・・オシボリの湿度であり、枯れ落ち葉内の湿度であり、
 バナナの皮むいたときの湿度であり、無菌培養したときの寒天の湿度である。

 この湿度の時、ランの根には乾燥防止の被膜・・・ペクチンが発現する。

 この湿度は、キウリ、トマト、キャべツ・・・パンジーなどのコンポストの湿度でもある。
 この湿度より乾燥すれば、これらの葉は萎びる。
 ランも一般の植物も・・・水が欲しいという湿度は同じである。
 どこが異なるかといえば・・・
 ラン栽培は「適地適産」という栽培概念が全然ないからである。
 最初から栽培が無謀な場所で・・・無理に無理を重ねて栽培するからである。
 更に菌根植物であるランを、共生菌削除のコンポストで植える。
 こういう栽培上の原理原則を全く無視した栽培、園芸だからである。
 植物園をミニ化したのが愛好家の温室。
 小さな温室の中に、全地球を再現するという努力。
 しかし、ラン菌のいない水ゴケ、バーク・・・で、地球上で行われている炭素循環は、
 絶対に再現不可能である。
 だから、簡単に根腐れを起こす。
 これを防ぐには「乾燥」しかない。

 限界への挑戦みたいなラン栽培である。
 熱帯エリアに自生する植物を、日本の冬があるところで栽培するには、
 石油の中で栽培するように・・・燃料費がかかる。
 原油が高くなれば・・・充分な温度に加温できない。

 昭和48年の第一次石油ショック。
 あの時、アメリカの蘭界ではどうしたか。
 サンフランシスコ、ロス・・・の冬温暖なところにある蘭園・・・
 例えばサンタバーバラ エステート。
 このラン園ですら・・・耐寒性の強いランの栽培を推奨した。
 Cymbidiumと同じ温度で栽培可能なレリア。
 ソフロ・・・。
 適地適産という考えがアメリカ、オーストラリアには有る。
 ランの適地を求めて人間が・・・そこに移住する。
 ところが・・日本には、ランの適地に人間が移住するということは少ない。

 日本ではカネと設備と石油でランを作ろうとする。
 ところが原油が高くなると・・・限界ギリギリの低温でカトレアを栽培することになる。

 ランから見れば・・・拷問のような乾燥。
 考えれてみれば、明治、大正、昭和の初期に洋蘭が日本に入ってきたときから、
 ラン栽培は・・・暖房との戦いの歴史であった。
 今のような暖房機のない時代、充分な暖房な出来なかった。
 低温多湿は・・・・即・・・根腐れ。
 この栽培法が現在も常識化している。
 宇井清太もランを始めた昭和37年。
 暖房機はなかった。
 日本は貧しかった。
 雪の積もる山形で洋蘭栽培することは冒険より無謀であった。
 「練炭」で暖房した。
 だから・・・今もCymbidiumである。
 このことは資源のない日本のラン栽培の基本である。
 資源のない日本で、石油依存のラン栽培いは・・・普及には無理がある。
 しかし、日本は幸せなことに、石油が安く買えた。
 円も高い。
 エネルギーを安く買えた・・・。
 そういうことで、熱帯原産の原種のラン栽培もブームになった。
 
 しかし、チョット原油が高くなれば・・・限界に近い温度で栽培せざるを得ない状況になる。
 そういう状況でSUGOI-ne栽培した場合、水ゴケのように乾燥させる。
 大失敗になる。
 SUGOI-ne栽培では、低温で栽培しても「オシボリの湿度」を維持すること。
 ラン菌が生きているから根腐れは起きない!
 この湿度こそ、全てのランに共通するプロトコームが生きられる湿度である。
 この湿度こそラン菌による炭素循環がスムースに行われるからである。
 自生地を再現するには・・・この湿度厳守である。

 これからはプロトコームが生きられるという条件から、
 ラン栽培を考えることである。

 これまでのラン栽培には・・・この目線が欠落していた。
 だから、適確な潅水の説明が出来なかった。
 
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kouza sa18